思ったより“老後は長い”かもしれないという事実
最近、ある調査でこんなデータを見ました。
65歳男性のうち約6人に1人が90歳まで、65歳女性の約半数が90歳まで、
そのうち約半分が95歳まで生きるそうです。
つまり、65歳を迎えた女性の2人に1人は90歳まで、4人に1人は95歳まで生きるということ。
「そんなに長くないかも」と思っていた老後も、実は40年近い長い時間になるかもしれません。
そう考えると、「今の家にこのまま住み続けて大丈夫かな?」という住宅問題は、
誰にとっても大きなテーマです。
正解はありません。でも、知っておくべきことはあります。
老後の住まいに「これが正解!」という答えはありません。
住んでいる地域や家の築年数、家計状況、家族構成、将来の介護――
さまざまな条件で“最適な選択”は変わります。
ここでは、持ち家の場合・賃貸の場合それぞれの注意点を整理してみます。
これからの住まいを考えるヒントになればうれしいです。
持ち家に住んでいる人
①マンションの場合
マンションは「老後も安心」と思いがちですが、実は注意点がたくさんあります。
まず、管理費や修繕積立金は年々上がる傾向にあります。
なかには、入居当初は安く設定しておき、10年・20年後に大幅アップというケースもあります。
いま住んでいるマンションが築何年なのか、修繕積立金の状況や、大規模修繕の予定など改めて確認してみましょう。
・築20年を超えると、大規模修繕が必要になる時期 →追加費用が発生することも
・機械式駐車場がある場合、維持費が想定以上にかかります。高齢になって免許を返納しても駐車場の維持費は払い続ける必要があります。
・高齢化が進むと、空室が増えて1戸あたりの修繕費や管理費の負担が上がる可能性大。
また、人口減少の影響でマンション全体の入居率が下がると、
「修繕費が足りない」「管理組合が機能しない」といった問題も増えています。
“自分のマンションは将来も維持できるのか?”を、一度シミュレーションしておくと安心です。
②戸建ての場合
戸建ては、修繕のタイミングを自分で決められるのがメリットです。
しかしその分、すべてを自分で管理しなければならないという負担も。
・屋根や外壁の塗り替えは15年に一度、それぞれ100万円前後
・給湯器、トイレ、風呂、ガスレンジ、ベランダ防水…40年住めばほぼ一巡します
・庭の手入れ、樹木の剪定なども高齢になると負担に
築浅の家なら安心と思いがちですが、40年後まで住む前提で考えると修繕は避けられません。
将来、「どこまで自分たちで手をかけられるか」を見極めることが大切です。
賃貸に住んでいる人
賃貸のメリットは、身軽に動けること。
子どもが独立した後や夫に先立たれた後、
暮らしのサイズに合わせて住まいを変えられるのは大きな利点です。
しかし、注意すべきは ”ずっと今の家に住める”と思わないこと。
建物の老朽化が進むと、家主は入居率を維持するために建て替えを検討します。
70歳・80歳で「立ち退きをお願いします」と言われたら……?
新しい家を借りたくても、高齢者は入居を断られるケースがまだまだ多いのが現実です。
実際に、私の身近で起きたことですが、
・UR賃貸団地の建て替えに伴い、家賃上昇が見込まれ、これに反対する高齢住民
・賃貸マンションに40年以上住んでいた人が80歳で引っ越しを余儀なくされた例
などもあります。
さらに、最近はオーナーが変わり、民泊用に転用されて家賃を急上昇させるケースも出ています。
一方で、賃貸には「負の遺産を残さない」という大きなメリットも。
子どもたちに家の管理や売却で負担をかけることがなく、
自分のペースで環境を変えやすいという自由さがあります。
「住」は一番お金がかかる“固定費”
衣・食・住の中でも、「住」は最もお金がかかる部分。
しかも、一度決めたら毎月確実に出ていく固定費です。
家の修繕、家賃、管理費――どれも少しずつ上がっていく傾向があります。
だからこそ、「今の家をこの先40年どう維持するか」、あるいは「もっと適切な住み方」を求めて住み替えをするのか・・・。
答えは簡単に出ませんが、高齢になってからでは考える力も行動力も落ちています。今のうちから現実的に考えておくことが大切です。
まとめ
持ち家にも、賃貸にも、それぞれの良さとリスクがあります。
どちらを選ぶにしても、
「今の家であと何年暮らせるか?」
「体力・経済力が変わっても暮らせるか?」
この2つを軸に考えて、少しでも後悔のない選択ができるようにしましょう。
老後の住まいを考えることは、
“人生の終わり”を考えることではなく、
“これからの40年をどう快適に生きるか”を考えること。
今のうちに、少しずつ現実と向き合っていきたいですね。

