親の葬儀を終えると、ふと「これからの自分はどう生きる?」「老後の生活費は足りるのか?」と考える機会が増えます。年金だけでは心もとないし、かといって株投資で1000万損失なんて話を聞くと大きな冒険は怖い。そんな50代にこそおすすめしたいのが「投資信託」。とりわけS&P500やオルカンなどの優良なインデックス投資です。
株のように1社に賭けるのではなく、分散しながら少しずつお金を増やしていく仕組みなので、初心者でも取り組みやすいのが特徴です。老後生活を始めるまで残り時間は少なくなってきましたが、今なら長期運用を前提とした投資信託での老後資金づくりにはまだ間に合います。それでは詳しく見てみましょう。
投資初心者は投資信託が始めやすい
投資といえば「株」と思い浮かぶほど株への投資は一般的です。投資を楽しみたい、しっかり勉強したい、資金に余裕がある、という場合は、気になる会社の株を買ってみるのも良い経験になるでしょう。
でも、全くの初心者で老後資産を形成したいなら投資信託、それも「S&P500」や「オルカン」などの優良なインデックス投資が手堅い選択です。なぜなら投資信託は1つの商品を買うだけで、自然と複数の企業や国に分散投資できる仕組みになっているからです。
ここでいう インデックス投資 とは、日経平均株価やアメリカのS&P500といった「株価指数(インデックス)」に連動するように作られた投資方法です。たとえば、S&P500に連動する投資信託を買えば、アメリカを代表する500社にまとめて投資しているのと同じ効果が得られます。
つまり、1社の株を買ってその会社の業績に一喜一憂するのではなく、市場全体の成長に乗っかる という考え方。市場全体が長い目で見れば右肩上がりで成長してきた歴史があるため、コツコツ積み立てることでリスクを抑えつつ資産形成ができるのです。
最初に株を勧めないワケ
インデックス投資をお勧めしましたが、株式投資が全面的に悪いわけではありません。
株を持てば配当金をもらえたり、株主優待があったりする会社も多く、決算資料を見てその会社の事業内容や将来方針を知る楽しさもあります。議決権を通じて株主として意見を述べる機会があるのも魅力です。
しかし、初心者にとって注意したいポイントもあります:
- 購入単位が大きい:日本では多くの株が「100株単位」で取引されます。株価×100株分の資金が必要になるので、少額から始めたい人には負担になることがあります。
- リスク分散ができない:資金を1社または数社だけに集中してしまうとリスクが高くなります。というのも、その企業の業績が悪化したり、不祥事や事故などの予期せぬ出来事が起こると、株価は一気に下落する可能性があるからです。数十~100社近くの企業に広く分散して株を購入できる資金力があるなら別ですが、そうでない場合は、このような変動をもろに受けてしまい、せっかくの資産が大きく目減りしてしまう可能性があります。
- 企業分析が求められる:どの企業が安定しているか、決算書の読み方や将来見通しを把握する力が必要です。初心者にはこの準備がハードルになることもあります。
これらをふまえると、全くの初心者が老後資金を作るなら、まずは投資信託のような少額で分散できる商品から始める方が安心です。
投資信託とはなにか?
それでは投資信託について説明します。
投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつにまとめて、運用のプロ(運用会社)が株式や債券、不動産などに分散して投資してくれる金融商品です。難しい企業分析や売買のタイミングを自分で判断しなくても、プロが代わりに運用してくれるのが大きな特徴です。
例えば個人で100社の株を買うのは現実的に難しいですが、投資信託なら1万円を買うだけで、その100社に分散投資しているのと同じ効果を得られる場合があります。
初心者にとってのメリットは大きく3つ。
- 少額から始められる(1万円程度からOK)
- 自動的に分散投資される(リスクが分散される)
- 長期で育てやすい(時間を味方にできる)
ポイントは、短期の値動きに振り回されず、途中でやめないこと。10年、20年とコツコツ積み立てることで、老後資金づくりの心強い味方になってくれます。
投資信託の商品にはいろいろある
投資信託として販売されている「運用商品」のことを「ファンド」と言います。このファンドの種類は実に豊富です。たとえば:
- 日本株に投資するファンド(トヨタやソニーなど日本の有名企業が対象)
- 米国株に投資するファンド(アップルやマイクロソフトなど世界を代表する企業が対象)
- 世界中の株式を少しずつ組み合わせる「全世界株式ファンド」
- 国債や社債に投資する「債券ファンド」(安全性を重視したい人向け)
- 不動産に投資する「REITファンド」(マンションやオフィスビルなど不動産ビジネスに連動)
- 株と債券をバランスよく組み合わせた「バランス型ファンド」
このように、投資信託には数千、数万ともいわれるファンドが存在しており、投資対象やリスクの大きさ、運用のスタイルまで多岐にわたります。
また手数料も証券会社やファンドによって異なります。
手数料・口座管理料について
- 購入時手数料:買う時にかかる。0~3%台が多いが「ノーロード(無料)」の商品もあり
- 信託報酬:運用期間中ずっとかかり、年0.1~2.5%台。保有残高から日々差し引かれる
- 信託財産留保額:解約時に発生することがある。0%のものも多いが商品によって異なる
- 監査費用・売買委託手数料など:運用資産から間接的に差し引かれる費用
- 口座管理料:証券会社や銀行によっては投資信託用口座の管理料が発生する場合も
手数料が高いと、せっかくの運用益が手数料で相殺されてしまい「手数料負け」となるケースもあります。運用成績以上に、手数料の安い商品を選ぶことが資産形成には重要です。事前に各費用をよく比較しましょう
投資信託のリスクとは?
次に投資信託のリスクについてです。
たとえば、銀行の定期預金は元本保証で「減らない安心感」が特徴ですが、投資信託は元本保証がありません。100万円が120万円になることもあれば、80万円に減る可能性も十分あります。世界的な経済ショックでは半分以下になる例もあり得ます。
ただし、上でも述べましたが分散・長期投資でリスクを抑えて「お金を育てる」ことも可能です。たとえ80万円まで下がっても、持ち続けることで100万、120万円と持ち直すチャンスもあります。しかし「投資は自己責任」。未来を予測することは誰にもできないので、自分でよく調べて納得して始めることが大切です。
投資の王道 S&P500とオルカン
それでは投資信託の良さがわかって頂けたと思いますので、次はどの商品にするか?、です。
投資信託には様々な商品があり、投資初心者には名前をみてもどれがいいか全くわかりません。
そこでおすすめしたいのが、「S&P500」と「オルカン(=オールカントリー)」です。
- S&P500
アメリカの代表的な企業500社にまとめて投資できる商品。アップル、マイクロソフト、アマゾンといった世界的企業が含まれており、アメリカ経済の成長に乗れるのが特徴です。 - オルカン(全世界株式インデックスファンド)
先進国から新興国まで、世界中の株式に分散投資できる商品。「アメリカだけじゃなく、世界全体の成長に乗りたい」という人に向いています。
どちらも「長期・積立・分散」の王道スタイルにぴったり。老後資産づくりを目的とするなら、この2つから選んで積み立てを始める人が多いです。
ただし、同じ内容の商品を購入したつもりでも証券会社やファンドによって手数料が大きく異なりますので、どこで買うか?どれを買うかは慎重に選ぶ必要があります。
投資信託購入はどうすればいい?
それではいよいよ投資信託を始める段階にきました。
まず最初にすることは、証券口座を開設すること。銀行でも取り扱っているところがありますが、一般に手数料が高かったり取り扱い商品数が少ないことが多いので、証券会社、それもネット証券がおすすめです。特に SBI証券 や 楽天証券 は利用者が多く、取り扱い銘柄数・手数料ともにバランスが良い会社と言われています。
証券会社での口座開設、特定口座やNISA口座についての解説は次の記事で紹介します。

