親の死を経験すると、「次は自分の番かもしれない」と立ち止まる瞬間があるものです。
まだ子育てや仕事に追われる50代にとって、“終活”は少し遠い話に感じるかもしれません。
それでも、家族に迷惑をかけたくないという思いから始めるなら、まずは日々の暮らしに関わる情報の整理から。
通帳や保険、連絡先、公的書類の保管場所など、「いざという時に家族が困らない」状態にしておくだけでも、大きな備えになります。
今回は、そんな50代から無理なく始められる終活の第一歩として、「情報の整理」に焦点をあててご紹介します。
銀行・証券・保険・カードの一覧
まず手をつけたのは、銀行・証券・保険・クレジットカードなど、主にお金に関する情報の整理です。
・銀行(口座番号・支店名)
・ネットバンク(ログインID)
・証券会社、iDeCo、NISAなど
・クレジットカード(引き落とし口座も)
・保険(団信、医療・生命・火災・収入保障など「保険と名のつくものすべて」)など
万が一のときに家族が困らないよう、一覧表にまとめておくことで、見える化と安心感につながります。
印鑑・パスワードの管理を考える
「すべてを一つにまとめておけば、家族が困らない」と思いがちですが、セキュリティの観点からは、重要なものほど“分けて保管”するのが安心です。
とはいえ、これに正解はありません。
パスワード管理アプリを使うのか、紙に書いて保管するのか?
物理的に残すのかクラウドに保存するのか?
これについてはご家庭の環境や家族のITリテラシーによって異なってきます。
大切なのは、自分に合った方法を選び、それを家族が「知っている」状態にしておくこと。安心のための整理が、逆に不安を生まないよう、共有の仕方も含めて工夫しておきましょう。
サブスク(定期購入)の一覧
サブスク(定期購入)の一覧も作成しましょう。
動画配信や音楽、オンラインストレージ、新聞、食材宅配など、今は思っている以上にサブスク契約が増えているもの。自分でも把握しきれていないケースも多く、万が一のときに家族が困らないよう一覧にしておくのは大事です。
また、家賃、水道、電気、ガス、スマホ通信料、回線使用料など毎月かかる経費も一緒にしておくと、今後家計を見直す際にも便利です。
公的書類の保管場所をまとめておく
いざという時、まず家族が困るのは「何の書類が、どこにあるのか分からない」ということ。
医療機関の受付や各種手続きには、保険証やマイナンバーカード、運転免許証などの公的書類が必要不可欠です。
また、住宅に関する契約書類やローン関連の書類も、本人が不在になると確認する手段がありません。
こうした重要書類は、まとめてファイル化し、保管場所を家族に伝えておくことが安心につながります。
まとめておきたい書類の例
・健康保険証、マイナンバーカード、パスポート、運転免許証
・家の賃貸契約書
・住宅ローンの契約書
・火災保険・地震保険の証券
・各種公共料金の契約書や支払明細(WEB明細であればログイン情報も)
・土地・建物の登記情報(紙の権利書はすでに不要の場合もあるが、保管しているなら明記)
💡【ポイント】
「普段はあまり使わないけれど、いざというときには必要なもの」が公的書類の特徴です。
書類をジャンルごとにファイルし、ラベルを貼っておくと家族にも分かりやすくなります。
緊急連絡先と生活の引き継ぎメモを残しておく
突然の入院や事故、あるいは実家の用事で数日家を空ける──そんな時に、「今の暮らしを引き継げる情報」があると、家族はとても助かります。
リスト化しておきたい情報の例
・緊急時に連絡してほしい相手 ~職場の上司、パートナー、兄弟姉妹、親しい友人など
・ご近所との関係 ~ゴミ出しの曜日、回覧板の場所、町内会のことなど
・ペットや植物の世話など、日常の小さな引き継ぎ項目
スマホとパソコンの画面ロック、どうする?
スマホやパソコンは個人情報のかたまりです。連絡先や写真、SNS、各種アプリまで、他人に見せたくない情報が入っている人も多いでしょう。
その場合は「画面ロックの解除方法は伝えない」と決めておくのも一つの終活の形です。
ただし、その場合は残された家族が困らないよう、連絡先一覧を共有しておく、ネット銀行を使用していることを伝えておくなど共有しておくべき情報は別の形にして残しておきましょう。
“何をどこまで見せるか”は自分で決めてOK。
自分が納得できる形で情報を管理しましょう。
いきなり完璧を目指さず、少しずつ整える
終活と聞くと、一度にすべてを整えなければいけないと思いがちですが、そんな必要はありません。
「今日は保険だけ」「週末はカードを確認しよう」など、少しずつ着手していくことが続けるコツです。
そして、年に一度見直す習慣をつければ、情報の鮮度も自然と保たれます。
完璧を目指すよりも、「今できることを一歩ずつ」。その積み重ねが、家族への安心につながります。